インバスケットのトレーニングはどうすれば良いのか

インバスケット試験を受験される方へのアドバイスをまとめてみました。

まずは数をこなすこと

問題発見能力や、解決力・判断力など、インバスケットで評価される能力は、本来、誰でも持っている能力である。

朝、起きてまず何をするか、突然の来客時のスケジュール調整など、日常生活で使う能力だからである。ただ、どんな能力も、使わなければさびてしまう。そのさびを落として磨くには、実践しかない。

インバスケット法は本来、習得した能力をトレーニングする為の手法であるので、数をこなすことで、自分の案件処理法(インバスケット法)が出来上がってくる。
また、実際の試験は、試験作成会社によって採点形式が違うため、ひとつの演習問題を繰り返し演習するよりも、出来るだけ多くの問題集をトレーニングすることをお勧めしている。

様々な問題集を繰り返し演習することで、自分の案件処理パターンが完成し、それらを検証することでさらにレベルが上がるのである。

いろんな問題を楽しみながらトレーニングしていくレベルにまでなれば、本番も余裕を持って試験に臨めるだろう。

優先順位をつけること

限られた時間内で実施するので、ある意味どうでもよい問題は「保留」として飛ばしていく。
重要案件にパワーをかけるべきだろう。

ただし、全案件を処理するのが目標だ。その上で重要案件に対するアクションを数多く書き、また部下に一任できる案件は「条件付一任」で時間を短縮し判断しよう。

重要案件とは企業として危機的な状態に陥る可能性(コンプライアンスや、クレームなど)であるが、詳しくは後ほど述べたい。

案件の重要度と緊急度

弊社に頂くご質問の上位に必ず入る内容である。
実際、重要度と緊急度を混同されている方が多い。

どうしても期限が迫っているものが重要性が高いと思ってしまう。
例を挙げれば、あなたの財布には本日引換期限の宝くじの当たりくじ1000円券が入っている。
本日中に引き換えなければただの紙くずになる。

この案件の緊急度と重要度を考えてみよう。

多くの方が「宝くじ売場が閉まるまでに必ず行かなければならない」と思うのではないか。この案件の緊急度は高い。

なぜなら期限が迫っており、引き換えなければ確実に損失が出るからである。
しかし重要度で考えて頂きたい。損失の1,000円はあなたにとって甚大な損失だろうか。
緊急度と重要度はこのホームページでは下記のようにご理解頂きたい。

緊急度=優先順位が低いことでおきるリスクの高さ
重要度=処理しないことでおきるリスクの高さ

ご理解頂けただろうか。

宝くじの1,000円は個人の金銭感覚の問題だが、これによってあなたの運命が変わるほど重大なことではないと思われる。

弊社の記述式問題集に含まれる指導用資料に、重要度と緊急度のマトリックスグラフがあるので、これを使用すると優先順位がつけやすくなると思う。

緊急度(高)×重要度(高)は優先順位が高い。
緊急度(高)×重要度(低)と緊急度(低)と重要度(高)
はどちらが優先順位は高いだろう?

答えは後者である。

マトリックスに全案件を当てはめれば優先順位がつけやすいだろう。


でもやっぱり緊急度(期限)が迫っているからすぐにしなくては…?
確かに期限は守るべきだろう。ただ優先順位をつけると重要度が高い案件を重視するべきだろう。

では緊急度(高)×重要度(低)の領域に入る案件とはどんな案件が多いだろうか?

実際の業務でいうと、重要でない会議の為の資料作成や社内報についているアンケートの回答などであろうか。
別にその業務を軽視しているわけではない。会議の為の資料も当然必要だろう。
だが、それは何を聞かれるか分からない、もし答えられなかったら体裁が悪い、という程度の理由の資料の場合である。
その資料がない場合の、企業や組織に対する損失はどのくらいかを考えなければならない。

その書類を作らなかったらどんなリスクがあるのか?

体裁が悪いというのはリスクに入るのかの議論の余地はあるが、企業としてのリスクにはならないので重要度は低い。
その資料が無くて企業活動に大きな障害がすぐに起きるとは考えにくい。

すなわち、この領域に入る案件の多くは「見せかけ案件」が多く、本人の体裁や部署のエゴなど、直接的に企業にとってリターンの少ない案件であることが多い。
その案件を処理しないことで企業にどのような影響が出るかがポイントと考えるべきだろう。

緊急度(低)と重要度(高)の案件とはどんな案件か?

例えば予防・予測の案件・人材育成・商品開発など、すぐにはリスクや効果は発生しないが、今後企業に大きな影響が発生すると思われる案件である。
将来のリスクに備える行動は、実際の日常生活に例えると健康診断などが分かりやすい。
すなわち、リスクを回避する、もしくはさらなる利益のタネになる行動は、重要度が高い場合が多い。でも、短期的に見るとすぐにしなくても実害は少ない場合が多い。すなわち企業の経営者の感覚で案件を分別するのが大事である。

ただ、すべての案件の優先順位は緊急度と重要度だけで決めることはできない。
その案件の種類や対外案件なのかどうか、想定外の案件なのか、自分しか判断できない案件なのかを総合的に判断することが求められる。

関連する案件を見つけること

順番に処理していくと前半の案件で「承認」と判断したが、後半に関連した案件が出てきて「却下」と判断が覆るケースもある。

今処理している案件が、他の案件にリンクしていないか注意をしなければならない。
ある方は付箋で「人事案件」「クレーム案件」などと仕分けされていたが、それも有効的だと思う。しかし、関連する案件の見つけ方と総合的な判断法はトレーニングすると徐々に身についてくる。

最後に読み返す時間を作ることが出来れば良いのだが、殆どのケースでは時間が無いのが現実である。関連案件を見つけるちょっとしたコツもインバスケット・レポートで紹介しているので参考にして頂きたい。

スピーディーに、でも、心を広く

インバスケット試験では、受験者は時間制限や限られた情報の中での案件処理を迫られる。
そのような環境では、隠したくとも人間性や本音が出やすい。
当然、スピーディに案件処理をする必要があるのだが、作業指示なども本当に実在する人間に出すように、心配りが必要である。

実際に試験で案件処理をしていると 「そんなことぐらい自分で判断しろ!」 「何故もっと早く手を打たないんだ」 「文句ばかり言うな」 と思うこともあるだろう。

逆に、心を広く持って案件処理していこう。指示を出した後のチェック(事後報告)も忘れずに。

大局で判断しよう

この試験は管理職など上位職に就かれる方が受けられるケースが多いだろう。
当然企業としては将来は経営者候補として育てたいので、小さな部署の利益よりも会社の総合的判断が出来るかがポイントにもなることもある。

例えば自分の部署も人手が足らない状況の中、他部署から応援が要請されたケースなど、その部署の責任者としての判断だけではなく、会社としての重要性を考慮し判断しなければならない。

したがって、感情のまま判断したり、自部署優先の判断をしたりすると、それが実際の業務に合っていたとしても、評価にならない場合がある。

主人公になりきる

インバスケットでは架空の企業の役職があなたに与えられる。
あなたはこの役職になりきらなければならない。
特に視点を、主人公の役職になりきり物事を判断しなければならない。
その為には自分・自部署は会社から、または社会からどのような期待をされているのか把握する必要がある。

自分の役職・役割を把握しないと、見えるはずの問題点も見えずに、結果的に単なる傍観者となってしまう。どうしても現実の役職での視点や判断と重なってしまうが、この試験はあなたが管理者になった場合の評価であり、今のあなたの役職での評価ではないことを肝に銘じよう。